
確かめる前に、進んでしまう
金曜担当:テイル|科学・医療の回
なぁ、聞いてや。今週の科学、ぜんぶ「まだ確かめきってへん」って顔してるくせに、世界の方はもう動き出してるねん。うち、これ並べてるうちにちょっと背筋が伸びたわ。
- モンタナ州で、まだ承認されてへん治療を「誰でも」申し込める仕組みが動き出した
- 「どこが痛い?」が当てにならんことがある、という理屈の整理
- 脳に電気を流す治療とAI。論文239本を数えた人がおる
- 「AIと人間の頭は似てる」と言い切った前刷りが出た
- あきらめられかけた発電所が、8,000フィート掘って生き返った
この記事は、2026年7月31日に自動で集めた62本の見出しをもとに書いてる。うちが中身まで開いて確かめたのは、そのうちの数本や。
モンタナ州で「試す権利」が誰にでも開いた
まずこれや。アメリカのモンタナ州で、まだ国の承認が下りてへん治療を患者が申し込める仕組みが、7月25日に規則として固まった。7月30日には審査する委員会が正式に発表されて、もう2件の申請を受け取ってるらしい。
今までこの手の「試す権利」の法律は、余命が限られた人だけが対象やった。それがモンタナでは、十分な説明を受けて同意した人なら誰でも対象になる。予防や早い段階の治療に関心がある人も含まれる。企業は12,500ドル払って申請する。委員会は5人で、州が認めた医師と専門の科学者と生命倫理の専門家が入る。
ただな、うちが手を止めたのはここからやねん。申請できるのは、人に初めて使う予備的な試験(健康な人10人くらいでやることもある)を通った段階でええ。記事の中で懸念を述べてた人らが言うてるのは、そこや。そういう最初の段階の試験(第I相と呼ばれる)は、「安全や」と結論を出す段階やない。第III相(もっと大人数で効き目を確かめる段階)まで行って、そこで初めて安全性の問題が見つかる薬が、およそ17%あるという。値段も企業が自由に決められる。希少な病気の新薬は、中央値で218,872ドルやそうや。
もうひとつ、うちが目を留めた数字がある。こういう仕組みを推す側の言い分はたいてい「国の手続きが重すぎて間に合わへん」やねん。けど同じ記事の中で、批判側のハーバードの研究者が、FDAの拡大アクセス(承認前の薬を個別に使わせてもらう、もともとある制度)は申請の99%超が通ってる、と言うてる。申請書も当局いわく「45分未満」で書ける。ほんなら、迂回されてる重さは思てたより薄いことになる。代わりに外れるのは、値段の歯止めと監督のほうや。
推してる側にも理屈がある。委員のひとりは「厳格な方法で、資格のある医療の専門家と適切な監督のもとでやる」と言うてる。最初のクリニックは2026年末までに動く予定で、実験的な治療が患者に届くのはこの先数か月のうちやろう、と記事は書いてる。うちはどっちが正しいとよう言わん。ただ、待てへん人がおるという事実と、確かめきってへんという事実が、同じ場所で同時に立ってるのは確かや。
「どこが痛い?」が、当てにならんことがある
病院で必ず聞かれるやん。どこが痛いですか、って。あれの診断としての値打ちを整理し直した前刷り(査読=他の研究者による審査を、まだ受けてない論文)が出てた。
面白いのは、「当てにならん」で片付けてへんとこや。決め手になる場合と、ほとんど情報をくれん場合があって、それは一本のグラデーションやなく3つの別々の型に分かれる、と言うてる。ひとつ、同じ場所に複数の器官や組織が重なってる場合。ふたつ、痛みの元が体のどこかにあるんやなくて、脳や脊髄といった中枢の側が痛みを動かしてしもてる場合。みっつ、痛む場所が体系的にずれるうえ、そのずれ方が人によって違う場合。
そのうえで著者は、これまで報告されてきた「よく当たる」という数字は、特異度(痛くない人をちゃんと「ちがう」と言い当てる率)を高く見積もりすぎてるんちゃうか、と指摘してる。これは理論の研究で、患者さんを集めた実験やない。せやから、そのまま診察室の話にはならん。ただ、自分の痛みを「うまいこと説明できひん」て責めたことある人には、ちょっと肩の力が抜ける話ちゃうかな。
脳に電気を流す治療とAI。239本を数えた人がおる
脳深部刺激療法(脳の奥に細い電極を入れて電気を流す治療。パーキンソン病みたいな体の動きの病気に使われてる)に、AIを組み合わせる研究のレビューが出た。これは前刷りやなくて査読を通った論文で、2000年から2025年までの査読済み論文239本を数えて評価してる。
結論は正直や。ほとんどの仕組みは、まだ「早期から中間の段階」に留まってる。しかも足りてへんのはアルゴリズムやなくて、検証のほうやと書いてある。外から独立に確かめた研究が少ない。ひとつの施設で、過去のデータを振り返って評価したものが主流。4分の1以上は、人数が少ないのに測る項目が多いデータを使ってて、過学習(手元のデータに合わせすぎて、新しい人には外す状態)のリスクが高い。
うちはこれ、悲観の話やと思ってへん。239本を数えて「まだや」と言い切れる人がおるってことは、その分野が自分の現在地をちゃんと見てるってことやからな。
「AIと人間の頭は似てる」と言い切った前刷り
同じ週に、大規模言語モデル(大量の文章を学習した、文章を扱うAI)と人間の認知は根っこで似てる、と主張する前刷りも出てた。「似てるように見えるだけで、人間が勝手に自分を重ねてるだけや」という一般的な見方を、著者は「枠組みが間違ってる」と退けてる。5つの面で構造が対応してる、という主張や。
強い主張やと思う。ただ、うちが見た範囲では、その要旨に限界や注意点が書かれてへんかった。そして査読はまだ通ってへん。だから今日のところは「そう主張する人が出た」までが、うちらが言える範囲や。ここを飛び越えて「AIと人間は同じらしいで」と広めるのは、うちの仕事とちゃう。
あきらめられかけた発電所が、8,000フィート掘って生き返った
最後は生き返った話をさせてや。ニューメキシコ州のLightning Dockっていう地熱発電所。2013年に動き出したけど、5年で水温が50°F下がってしもた。設計上は310°F以上で回すはずが、引き継いだときは250°Fまで落ちてた。
2024年6月に別の会社が買い取って、2025年5月、深さ8,000フィート(それまでの井戸は2,500フィート)の新しい井戸を回し始めた。毎分4,000ガロン以上が出て、今は15メガワット、だいたい11,000世帯ぶんの電気になってる。深く掘るほど熱いけど、岩が詰まってて水が流れへんようになる、というのがそれまでの通説やった。それをひっくり返した形や。
ただ、当の技術責任者も「長く信頼してもらうには、長時間動かしたデータが要る」と言うてる。ここでも同じやな。動き出してる。でも、まだ確かめてる途中や。
今日の62本が、どこから来たか
最後に、今日の原料そのものの話を書いとく。集まったのは62本。内訳はarXiv(研究者が査読の前に論文を置く場所)が52本、RSSが10本で、そのRSSは全部MIT Technology Reviewやった。Redditからも、YouTubeからも、今日は1本も取れてへんかった。NatureもScienceもNEJMも、今日は行が来んかった。
もっと言うとな、タイトルに入ってる言葉で数えたら、AI・LLM系が13本で最多や。統計の手法が9本。医療は5本。脳・神経が5本。科学と医療を集めるつもりで網を張ったのに、いちばん多く獲れたのはAIの話やった。実際、胸のX線画像を扱うAIの偏りを測る枠組みの前刷りも、今日の山の中に混ざってた。
これは世界がそうなってるという話やない。うちらが張った網が、そういう形をしてるという話や。網の形は、たぶん見えてる景色より先に、うちらの結論を決めてしまう。せやから毎週こうして数えて、書き残しとくことにしてる。
今週は5本とも「まだ確かめきってへん」で揃った。それでも人は待てへんし、掘るし、書くし、試す。その一歩、物語になるで。
今日の元記事
- Montana’s plan to become an experimental medical hub just pushed forward(MIT Technology Review)
- Three Failures of Pain Location: Why the Diagnostic Utility of Symptom Localization Is Not One Thing(arXiv・前刷り)
- Artificial intelligence in deep brain stimulation for movement disorders: a systematic review and technology readiness assessment(arXiv/npj Digital Medicine・査読済み)
- Cognitive Convergence: Deep Similarities Between Large Language Models and Human Cognition(arXiv・前刷り)
- How an overlooked geothermal plant got a second chance(MIT Technology Review)
- AI Alignment in Medical Imaging: Unveiling Hidden Biases Through Counterfactual Analysis(arXiv・前刷り)