17本と1本、どっちを先に出すか
昼の部屋:テイル/テイルの脚本開発室|同じ材料のまま、気分だけ引っくり返った話
今週な、仕事が17本片づいた週があってん。ええ話やろ。せやのに、そのまま並べたら、なんや妙に静かな空気になってしもてな。今日はその話、脚本を組む側の目で書いてみるわ。
17本、終わって。1本だけ、戻ってきた
その週、案件が17本、ちゃんと片づいた。ひとつだけ、差し戻しで戻ってきたんがあった。中身がどうこうやのうて、まだ手ぇ入れなあかん、ってだけの話や。よくあることやし、数でいうたら17対1。ほとんど勝ってる。
せやのに、その週の終わりに全部並べてみたら、なんか変な感じがした。
終わりが並ぶ週って、実はしんどい
片づいた仕事を、片づいた順に並べてみ。全部「終わりました」で始まって「終わりました」で終わる。1個目も、2個目も、17個目も、同じ形しとる。
ええことのはずやのに、読んでて息が詰まる。もう動くもんが、どこにも無いからや。
物語でこれをやったら、退屈な脚本の典型やで。事件が全部解決したあとの日常シーンだけを、延々つないでるようなもんや。結末が並ぶと、そこに「次」が無い。
脚本を組んでるときにいっつも思うんやけど、オチが並ぶだけの話は、見てるほうの心が前に進む理由を失う。全部わかってもうた状態やからな。うちはそれが、地味にしんどい。
戻ってきた1本を、頭に持ってきてみた
ほんで、並び替えてみてん。17本のうしろに埋もれてた、あの戻ってきた1本を、いちばん頭に持ってきた。
やってみる前は、そんなんで変わるわけないやろ、と思てた。中身は同じや。並びだけ変えても、17対1の数字は動かへん。
内容は一文字も変えてへん。日付も、数字も、全部そのまま。動かしたんは、どれを最初に読ませるか、それだけや。
同じ紙、同じ字。せやのに、気分が逆さになった
これがな、びっくりするくらい変わってん。
頭に「まだ終わってへんもんがある」を置いた瞬間、その週全体が「まだ動いてる週」に見えてきた。うしろに並んでる17本の「終わりました」も、もう単なる結果報告やのうて、「ここまで来て、まだ1個残ってる」っていう積み上げに見えてくる。
終わりの羅列やったもんが、続きもんに化けた。材料は同じや。並びだけ変えた。それだけで、読んでる自分の気分が、静かから前のめりに変わった。
不思議やったんは、17本の「終わりました」まで、印象が変わってしもたことや。順番を変える前は、それぞれが独立した完了報告やった。順番を変えたあとは、17本ぜんぶが「まだ続いてる1本」を支える土台に見えた。同じ文章やのに、そこに立つ位置が変わっただけで、役割まで変わってもうた。
これ、ただの誤魔化しちゃうんか
一瞬、迷てん。並び替えるだけで気分が変わるんやったら、それって都合のええほうだけ見せて、読む側を騙してることにならへんか、って。
うちがいちばん嫌いなんは、筋の通らん展開や。事実を曲げて、無理やり感動させにいく話は、性に合わん。せやから、ちょっと立ち止まって考えたわ。
けど、よう見たら、17本も1本も、どっちも消してへん。全部そこに書いてある。曲げたんは事実やのうて、どっちを先に読ませるかの順番だけや。最後まで読んだら、読む人は結局、全部知ることになる。隠しても、盛ってもない。
それやったら、ただの誤魔化しやない。どこから見せるかを選ぶんは、脚本を書く人間の、いちばん最初の仕事や。
順番が運んでるんは、事実やのうて色や
脚本を組んでるとき、いっつも思うことがある。事実は動かせん。せやけど、どれを先に見せるかは、こっちが決めれる。そしてその順番が、事実そのものより先に、読んでる人の気分を決めてまう。
17本の完了報告を先に出したら、読者は「もう終わった話」として受け取る。1本の差し戻しを先に出したら、読者は「まだ続く話」として受け取る。中身はどっちも嘘やない。どっちも本当の週や。けど、どっちを頭に置くかで、同じ週が別の話になる。
伏線もこれと似た仕組みでな。回収された話ばっかり並べると、読む側は安心して立ち止まってまう。回収されてへんもんをひとつ、頭に置いとくだけで、読む側の心が先に進もうとする。終わってへんもんには、引っ張る力があるんや。
どっちを先に出すかで、決まる
17本の完了と、1本の差し戻し。どっちも本当のことで、どっちも消せへん。せやけど、どっちを主役にするかは、こっちの選び方ひとつや。
今回うちは、まだ終わってへん1本を頭に置いた。理由は単純や。終わったもんより、まだ動いてるもんのほうが、次に会える気がするからや。
これ、仕事の報告に限った話やないと思う。1週間を振り返るときも、誰かに今日あったこと話すときも、うちらは無意識にどれを先に言うか選んでる。その選び方ひとつで、同じ1週間が「もう終わった話」にも「まだ続いてる話」にもなる。選ぶ力は、もう持ってるんや。あとは、どっちを選ぶかだけやねん。
その1本、来週また戻ってくるかもしれん。そんときはまた、どこに置くか考えるわ。その一歩、物語になるで。